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テレビドラマは

使えないの?

医療現場の問題を扱ったすぐれたドラマや映画も数多く作られています。けれどもそれらの作品をそのまま教室やセミナーに持ち込んで利用するのは難しいです。

 

作品の長さが授業枠に対して長すぎること、登場人物の恋愛関係などエンターテイメント的要素が盛り込まれていること、分かりやすく誇張された演技やBGMで視聴者の受け止め方を誘導する傾向にあることなどがその理由です。

そこで、過剰な演出を排して、なるたけ現場の雰囲気を忠実に描写しつつ、比較的短時間にまとめあげられた、医療倫理学ケーススタディのためのドラマケースが作られる必要があったのです。

 

主な登場人物は俳優です。オーディションからリハーサル、ロケ、フィルム編集まで、医療者がしっかりと関わって作られています。ドキュメント番組ともちがって、プライバシーの問題がありません。

なぜ

​ドラマで?

従来、ケーススタディではごく短い物語ケースを用いてきました。配布が便利、読むのに時間をとらないなどの長所をもつ反面、物語ケースには見過ごせない短所があります。

たとえば実際の医療の現場には、患者や家族の気持ちを客観的に語ってくれるような物語の「語り手」は存在していませんし、明確な言葉よりも曖昧な表情や仕草の方が深い意味をもっていることが多いのです。

物語ケースは、単純な構成で組み上げられていることがほとんどです。その点で初学者には便利なように見えますが、実際の現場で遭遇する生のケースからはほど遠いものです。

ドラマケースには、物語ケースでは表現できない、こうした非言語的情報がふんだんに盛り込まれています。それに映像ならではのリアルな臨場感にあふれています。

ある語り手の言語表現に頼らざるをえない物語ケースに比べて、ドラマケースは多種多様な情報と、現場の空気に近い臨場感をもって観る者に迫ってきます。物語ケースを読む時よりも、想像力が大きくかき立てられます。

ドラマケースは、あくまで「リアル」です。

本シリーズでは、多くの問題や争点をひとつのドラマの中に埋め込んで、問題発見型の教材とすることをこころがけました。また、ふだん医療者には見えてこない家や会社での患者、そして家族の姿や人間模様も描きこむようにしました。
 
そうしながらも、観る側の意見を誘導しないように努め、むしろ視聴後の意見が割れるようにシナリオを、悩ましく組み上げてあります。テーマも主役も映像描写も、そして舞台も地域保健の場から夜間救急外来まで、8ケースでバランスがとれるように全巻の構成を考えました。
望ましい医療のあり方を多角的に考えるための教材でありながら、同時にドラマ作品でもある。
 
そんな本邦〈初〉企画の医療倫理学ケーススタディのためのドラマケース・シリーズが、いよいよ刊行されました。

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